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賃貸退去費用は誰が払う? 原状回復の大家負担・入居者負担を管理会社が図解解説

賃貸管理原状回復名古屋

賃貸の退去費用、「これは大家が払うの?入居者が払うの?」で揉めるケースはとても多いです。結論から言うと、判断基準はたった一つ。「普通に生活して発生したものか」「注意していれば防げた損傷か」。前者(通常損耗・経年劣化)は貸主負担、後者(故意・過失・善管注意義務違反)は借主負担が原則です。宅建士で賃貸管理を本業にしている立場から、図で分かりやすく解説します。

ただし、最初に大事な前提を。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、法律そのものではありません。あくまで判断の基準(目安)であり、実際の負担は契約内容や損耗の程度、個別の事情によって変わります。この記事も「必ずこうなる」という断定ではなく、「原則こう考える」という地図として読んでください。

あおいろ

退去立会いを何度もやってきた経験から言うと、揉める原因のほとんどは”知識のズレ”です。正しい基準を双方が知っていれば、退去費用のトラブルは大きく減らせます。

この記事で分かること
  • 退去費用(原状回復)の貸主負担・借主負担の線引き(図解)
  • クロス・床・設備など部位別の判断
  • 借主負担でも全額ではない「減価償却」の仕組み
  • 管理会社がいると、退去精算はどう変わるのか
  • よくある10ケースの判定と、大家・入居者それぞれの実務アドバイス

Basic

まず、いちばん多い誤解を解きます。原状回復とは、「借りた時の新品同様の状態に戻すこと」ではありません。「退去=部屋を新品にする費用を全部払う」と思っている人が多いですが、それは間違いです。

国土交通省ガイドラインでは、原状回復を「借主の故意・過失、善管注意義務違反(=借主が本来払うべき注意を怠ること)、通常の使用を超える使い方によって生じた損耗を元に戻すこと」と定義しています。つまり、時間の経過で自然に古くなる「経年劣化」や、普通に暮らしていれば生じる「通常損耗」は、借主が元に戻す義務はありません。

なぜなら、通常損耗の分は、毎月の家賃にあらかじめ含まれていると考えられているからです。大家は家賃という形で、少しずつ建物の傷み分(減価償却費)を受け取っている。だから、普通に住んで生じた傷みまで退去時に別途請求するのは、二重取りになってしまう、という理屈です。2020年の民法改正では、この考え方が明文化されました(民法621条:通常損耗・経年劣化は借主の原状回復義務に含まれない)。

かつては「原状回復=新品に戻す」と拡大解釈され、本来は大家負担のはずの経年劣化まで入居者に請求する過剰請求が横行しました。「日照で畳が変色した」「家具の跡が床に残った」まで請求される——こうしたトラブルが多発したことが、ガイドライン策定の背景です。今では裁判所も、このガイドラインを判断のよりどころにしています。

Money

負担区分の話に入る前に、「退去費用」と呼ばれるものの中身を整理しておきます。退去時に発生しうる費用は、ざっくり次のように分かれます。

退去時に発生しうる費用
  • 原状回復費:クロス張替え、床の補修など。負担区分は原因による
  • ハウスクリーニング費:原則は貸主負担だが、特約で借主負担が多い
  • 鍵交換費:原則は貸主負担だが、特約で借主負担のケースも
  • 未払い賃料・違約金など:契約内容による

金額の目安は、範囲やグレードで大きく変わります。クロスや床の部分補修なら数万円〜十数万円、部屋全体に及ぶと数十万円になることも。ただ、ここで大事なのは「総額の大きさ」より「その内訳が適正か」です。高額に見えても、通常損耗まで含めた過剰請求かもしれないし、逆に妥当な過失分の請求かもしれない。金額に驚く前に、まず「何にいくらかかっているか(内訳)」を確認する——これが退去費用と向き合う第一歩です。次の章から、その内訳を判断する基準を見ていきます。

Which

では具体的に、何が貸主負担で、何が借主負担なのか。判断基準は「防ぐことができたか」です。防げなかった自然な傷みは貸主、防げたはずの損傷は借主、と考えます。

原状回復の貸主負担と借主負担の対比一覧
「普通に暮らして生じた」なら貸主、「防げた損傷」なら借主
代表例:どっちが負担する?
  • 日焼けによるクロスの変色 → 貸主(日照は防げない)
  • 家具による床のへこみ → 貸主(居住に伴う通常の使用)
  • テレビ裏の黒ずみ(電気焼け) → 貸主(自然現象)
  • 画びょうの穴 → 貸主(通常の生活の範囲)
  • タバコによる黄ばみ・臭い → 借主(吸わなければ防げた)
  • ペットによる傷や臭い → 借主(管理できたはず)
  • 掃除不足によるカビ → 借主(手入れを怠った)
  • 引越し時につけた傷 → 借主(不注意による損傷)

並べてみると、線引きの軸がはっきりします。「生活していれば当然生じるもの」は貸主、「気をつけていれば避けられたもの」は借主。これが原状回復の判断の、いちばんの土台です。

Part

もう少し細かく、トラブルになりやすい部位ごとに見ていきます。ポイントは、同じ部位でも、原因によって判断が変わることです。

部位別の原状回復負担区分の表
同じ部位でも、原因が「経年」か「過失」かで負担者が変わる

【クロス(壁紙)】 貸主負担になるのは、日焼け、家具設置による跡、テレビ裏の電気焼け、通常範囲の画びょう穴など。借主負担になるのは、タバコのヤニ、落書き、下地まで傷める大量のネジ穴、清掃不足によるカビなどです。画びょうはセーフ、下地に達するネジ穴はアウト、というように程度で変わります。

【床(フローリング・カーペット・畳)】 貸主負担は、家具の設置跡、自然な色あせ、通常使用による摩耗。借主負担は、引越し時の傷、飲み物を放置したシミ、ペットの傷、キャスターによる傷など。液体をこぼしてもすぐ拭けば問題ありませんが、放置して床材を傷めると善管注意義務違反となり、借主負担になり得ます。

【設備(エアコン・給湯器など)】 貸主負担は、寿命による故障や経年劣化。これらは大家が入居者に提供している設備なので、寿命が来れば大家の責任で交換します。一方、借主負担になるのは、フィルター掃除を怠って壊した、誤った使い方で破損させた、といったケース。「経年で壊れた」なら貸主、「手入れ不足で壊した」なら借主です。

あおいろ

立会いでいちばん判断が割れるのが、この”原因”の部分。だから入居時の状態を記録しておくことが、後々ものを言うんです。

Ratio

ここは大家・入居者どちらも誤解しやすいポイントです。仮に借主負担になっても、新品価格を全額払うわけではありません。壁紙などの内装材には耐用年数があり、住んだ年数が長いほど、借主の負担割合は下がっていきます。これを経過年数による減価償却と言います。

クロスの耐用年数は6年。負担割合は(耐用年数−経過年数)÷ 耐用年数で計算します。

クロスの借主負担割合(耐用年数6年)
入居3年で退去約50%負担
入居5年で退去約17%負担
入居6年以上で退去残存価値1円=ほぼ0円

クロスの借主負担割合が入居年数で下がるグラフ
壁紙は6年で残存1円。長く住むほど借主負担は下がる

ただし、「6年住めば何をしても無料」ではありません。ここは重要なので、例外をはっきり書いておきます。

残存価値0円でも借主負担になり得る例外
  • 施工費(手間賃):材料の価値は0でも、張替え工事の手間賃は損害として請求され得る
  • 下地・石膏ボードの損傷:クロスの奥の下地材は耐用年数が長く、6年ルールの対象外
  • 善管注意義務違反による重大な損害:手入れを著しく怠った結果の損傷は、減価償却後でも問われ得る

たとえば、結露を放置してカビが壁の下地まで進んだ場合。表面のクロスは6年で0円でも、その奥の下地の補修費には6年ルールが適用されず、借主負担になります。「通常損耗は貸主・経過年数で減額」は基本ルールで、手入れを怠った重い損傷は別、というわけです。

Reform

もう一つ混同されやすいのが、原状回復と、物件価値を高めるリフォーム(グレードアップ)の違いです。この2つはまったく別物として扱われます。

原状回復とリフォームは別
  • 原状回復:壊した部分を元の状態へ戻すこと
  • リフォーム(グレードアップ):物件の価値を高めるための投資

たとえば、古いキッチンを最新設備へ交換するのは「価値向上」=貸主負担。次の入居者を呼ぶための投資であって、退去する入居者に請求できるものではありません。一方、入居者が壊した設備を同等品へ復旧するのは、状況により借主負担になり得ます。「新しくグレードアップする費用」と「壊した分を元に戻す費用」は、まったく違う——ここは請求書を見るときの大事なチェックポイントです。

Special

ガイドラインは強力な基準ですが、法律そのものではありません。民法には「契約自由の原則」があり、双方が合意した特約があれば、そちらが優先されることがあります。代表的なのがこの3つです。

よくある退去時の特約
  • ハウスクリーニング特約:退去時の清掃費を借主負担とする(原則は貸主負担なので特約で変更)
  • 鍵交換特約:次の入居者のための鍵交換費を借主負担とする(原則は貸主負担)
  • その他の退去時費用特約:畳の表替えなどを借主負担とする例

ただし、「特約だから必ず有効」ではありません。有効と認められるには、①内容が明確であること ②金額が明示されていること ③借主が理解して合意していることが重要とされます。「退去時クリーニング費として◯万円を負担する」のように金額まで書いてあると有効性が高い一方、あまりに一方的で借主に不利すぎる特約は、消費者契約法などにより無効と判断された裁判例もあります。だから、特約があっても中身を確認することが大切です。

Kanri

ここが、現場の人間として一番書きたいところです。原状回復は「言った言わない」の水掛け論になりやすい。そこで管理会社が間に入ると、判断の流れが仕組み化され、トラブルを未然に防ぎやすくなります

管理会社がいる場合の原状回復フロー
入居時の記録から適正精算まで、流れを仕組みにする

ポイントは、管理会社の役割は単なる入退去手続きの代行ではなく、貸主と借主双方の「公平な調整役」だということです。大家寄りに過剰請求すれば入居者と揉め、入居者に配慮しすぎれば大家の利益を損なう。どちらにも偏らず、ガイドラインと契約に沿って淡々と線を引く。これができる管理会社かどうかで、退去時の後味はまるで変わります。

とくに効くのが入居時の記録です。原状回復トラブルの最大の原因は「入居時の状態が分からないこと」。管理会社が入居前の写真を保存していれば、「この傷は入居時からあった/なかった」を客観的に示せる。立会いでも、原因を一つずつ確認して記録に残すので、後から「聞いてない」が起きにくい。仕組みで防ぐ——これが管理会社を挟む一番の価値です。

あおいろ

正直、大家さんが個人で全部やるのは大変です。感情も入りますしね。第三者の管理会社が基準で線を引くほうが、双方フェアに収まりやすいんです。

Local

私は名古屋で賃貸管理の仕事をしていますが、この街でも退去費用のトラブルや、原状回復の判断に悩む大家さん・入居者さんは少なくありません。名古屋は区や沿線で入居者層が大きく変わり、エリアによって「そもそもどこまで直せば次が決まるか」の感覚も違います。原状回復の負担区分と、次の客付けに向けた工事は、本来セットで考えるべきものです。

個人の大家さんが、退去のたびに原因判定・減価償却の計算・入居者との交渉を一人でこなすのは、かなりの負担です。感情も入りやすい。そこを地域の賃貸管理会社に任せると、ガイドラインに沿った公平な精算と、次の募集を見据えた提案を一気通貫でやってもらえます。名古屋で賃貸経営をしていて退去精算に不安があるなら、こうした判断を日常的に行っている管理会社に一度相談してみるのも、有効な選択肢です。もちろん、入居者側で「この請求は妥当か」を確認したい場合も、まずは内訳とガイドラインに立ち返るのが基本になります。

Cases

実際の現場でよく迷うケースを、判定→理由の形で並べます。判断の感覚をつかむのに使ってください(いずれも一般的な原則で、契約や損耗の程度により変わります)。

原状回復・10ケース判定
  • ①壁紙の日焼け貸主。日照による変色は防げない通常損耗
  • ②テレビ裏の黒ずみ貸主。電気焼けは自然現象で防げない
  • ③画びょうの穴貸主。ポスター等を貼る通常の生活の範囲
  • ④大きなネジ穴借主。下地まで傷める、通常を超える使用
  • ⑤タバコのヤニ汚れ借主。吸わなければ防げた、臭い・変色の原因
  • ⑥結露放置によるカビ借主。拭き取り・換気を怠った善管注意義務違反
  • ⑦家具によるへこみ貸主。居住に伴う通常の使用
  • ⑧引越し時の床の傷借主。不注意による損傷
  • ⑨エアコンの寿命故障貸主。設備の経年劣化
  • ⑩掃除不足による設備故障借主。メンテナンスを怠った過失

10個並べると、判断軸が一貫しているのが分かります。同じ「壁の穴」でも画びょうか大きなネジ穴か、同じ「エアコン故障」でも寿命か掃除不足か。迷ったら「普通に暮らして生じたか/防げた損傷か」に立ち返れば、たいてい答えは出ます。

Tips

最後に、退去トラブルを防ぐために、それぞれの立場でできることをまとめます。共通するのは「記録を残す」ことです。

入居者向けのアドバイス
  • 入居時に部屋中を写真・動画で残す:もとからある傷を日付つきで記録
  • 傷や不具合は早めに管理会社へ報告:「最初からあった」を証明できる
  • 退去立会いで内容を確認する:その場で急いでサインしない
  • 納得できない請求は内訳を見る:通常損耗・減価償却が反映されているか確認

大家向けのアドバイス
  • 入居前の写真を保存する:立証責任は基本的に貸主側にある
  • 修繕履歴を管理する:いつ何を替えたかで減価償却の起点が分かる
  • 過剰請求はしない:通常損耗まで求めると特約ごと無効になるリスク
  • 適正な請求は遠慮しない:明らかな過失は、根拠を示して正当に請求
  • 管理会社を活用する:第三者が基準で線を引くと双方が納得しやすい

面白いもので、大家側・入居者側のコツは、どちらも「入居時の記録を残す」に行き着きます。写真が一枚あるだけで、水掛け論をほとんど防げる。原状回復のトラブルは、正しい知識と記録の両輪で、大きく減らせるということです。

Conclusion

長くなったのでまとめます。原状回復は「新品に戻すこと」ではなく、判断基準は「普通に暮らして発生したものか」「防ぐことができた損傷なのか」という一点。通常損耗・経年劣化は貸主負担、故意・過失・善管注意義務違反は借主負担が原則です。借主負担でも経過年数で減額され、クロスなら6年でほぼ0円。ただし施工費・下地損傷・善管注意義務違反は例外で、特約があれば区分が変わることもあります。

そして、管理会社が間に入ると、入居時の記録から退去精算までが仕組み化され、双方が納得しやすくなる。正しい知識と記録があれば、退去トラブルの多くは防げます。大家さんも入居者も、この基準だけは頭に入れておいてください。もし名古屋で賃貸経営や退去精算に不安があれば、こうした判断を日常的にやっている管理会社に相談してみるのも、有効な選択肢だと思います。

本記事は国土交通省ガイドラインを基にした一般的な解説であり、実際の負担区分は契約内容、損耗状況、個別事情によって異なります。ガイドラインには法的強制力はなく、判断に迷う場合は契約書の確認や、専門家(消費生活センター・弁護士等)へのご相談をおすすめします。

あおいろ

あおいろ
名古屋で不動産管理の仕事をしつつ、投資・暮らしを実験中。保有資格は宅地建物取引士・FP2級。ガジェットやAIのこともゆるく書いてます。
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